処遇改善加算 ― 令和7年度の見込みは62万円、実績は854万円(13.8倍)
最終更新: 2026年10月12日
主な出典公文書出典の扱い方
このページは「処遇改善加算の検証」の令和7年度の実績報告書に関する連載の第1回です。
福祉・介護職員等処遇改善加算は、職員の賃金を上げるために、障がい福祉サービスの事業所の報酬に上乗せして支払われるお金です。事業所は、年度の初めに「計画書」で受け取る見込みの額と賃金の上げ方を届け出ます。年度が終わると「実績報告書」で、実際に受け取った額と、その額以上を賃金の引き上げに充てたかを報告します。
大阪市への情報公開請求で、しょーとすていYorimado(合同会社Yorimado)の令和7年度(令和7年4月〜令和8年3月)の計画書と実績報告書の両方を入手しました。同じ年度・同じ事業所について、事業者自身が書いた2つの書類です。
何が問題か
年度の初めに届け出た加算の見込みが、実際の約14分の1でした。
令和7年度の処遇改善加算 ― 計画書の見込みと実績
見込みは約62万円、実績は約854万円
しょーとすていYorimado。最初の1か月で、1年分の見込みの約9割に達していた
2つの書類を並べた表を見る見込みは令和7年度の計画書(619,860円)、実績は実績報告書(8,544,418円)、月ごとの額は大阪市が提供した給付の実績データ(4月分 549,370円、4〜5月分 1,074,781円)。
図解:しょーとすていYorimado の令和7年度の処遇改善加算について、計画書の見込みと実際の加算額を比べた横棒。計画書の1年分の見込みは約62万円。実際の加算額は、最初の1か月(令和7年4月分)だけで約55万円、最初の2か月で約107万円となり、1年分の実績は約854万円で、見込みの13.8倍だった。
- 事業者の届出
- 令和7年4月に提出した計画書で、令和7年度の処遇改善加算の見込みを年619,860円とした。事業所は開設から4か月がたち、毎月の請求をしていた
- 記録が示すこと
- 実績報告書に事業者が書いた同じ年度の加算額は8,544,418円で、見込みの13.8倍。最初の1か月だけで549,370円と、1年分の見込みの約9割に達していた
- なぜ問題か
- 計画書は、賃金改善の約束の大きさを決める書類です。見込みが実際の約14分の1だと、約束も約14分の1の大きさで受け付けられます。受け取る加算の額は実際の請求で決まるので、見込みが小さくても減りません。翌年度(令和8年度)の計画書でも、見込みは前年度実績の約3割でした
加算の額が大きいこと自体は、利用(給付)が多いことの結果で、それだけでは問題ではありません。このページで取り上げるのは、届け出た見込みと実績の開きです。
計画書と実績報告書を並べる
| 項目 | 計画書(令和7年4月15日受付) | 実績報告書(令和8年7月30日提出) |
|---|---|---|
| 処遇改善加算の額(年) | 619,860円(見込み) | 8,544,418円(実績) |
| 一月あたりの報酬総額(処遇改善加算を除く) | 324,872円 | 約448万円(※) |
| 賃金の引き上げに充てる額(年) | 650,000円(見込み) | 8,995,626円以上(法人全体。下記) |
※実績報告書には報酬総額の欄がないため、加算額を加算率(短期入所の加算Ⅰ=15.9%)で割り戻して算出しました(8,544,418円 ÷ 15.9% ÷ 12か月)。
- 比べているのは、しょーとすていYorimado の1事業所どうしです。令和7年度の計画書に載っている事業所は、この1つだけでした。
- 実績報告書は法人単位で、もう1つの事業所「ちるMado(ちるまど)」(行動援護)の加算額 451,208円も含みます。法人全体の加算額は 8,995,626円です。
- 実績報告書の加算額は、大阪市が提供した給付の実績データ(同じ受付の期間)と 119円差で一致します。事業者の記載が実際の受取額と合っていることは、市のデータからも確かめられます。
最初の1か月で、年間の見込みの約9割に
大阪市が提供した給付の実績データを、サービスを提供した月ごとに並べました。令和7年4月分だけで、処遇改善加算は 549,370円です。年間の見込み(619,860円)の 88.6% にあたります。5月分を足すと 1,074,781円となり、2か月で年間の見込みを超えています。
計画書が大阪市に受け付けられたのは令和7年4月15日です。事業所は令和6年12月に開設しており、この時点で4か月分の請求の実績がありました。開設から令和7年3月までは処遇改善加算を算定しておらず、令和7年4月が算定の最初の月です。
月ごとの額は、大阪市が提供した給付の実績データ(短期入所の処遇改善加算Ⅰ・269行)の単位数に、大阪市の1単位の単価10.96円を掛けて算出し、後から取り消された請求(過誤)を差し引いています。1年分の合計は8,630,693円で、事業者の報告額(8,544,418円)との差(約1%)は、集計の区切り方(サービス提供月か、請求の受付月か)の違いで説明できます。
令和8年度の計画書でも、見込みは前年度実績の約3割
翌年度の令和8年度の計画書(令和8年4月11日誓約)でも、同じ向きのずれが出ています。
- 令和7年度の実績(法人全体)
- 8,995,626円(実績報告書)
- 令和8年度の見込み(法人全体)
- 2,673,390円(計画書)=前年度実績の29.7%
- 計画書を出した時点で受け取り済みの額
- 令和7年度分として少なくとも約699万円(※)
※大阪市の給付の実績データのうち、令和7年8月〜令和8年2月に受け付けられた請求分の合計(6,988,885円)。国民健康保険団体連合会からの支払いは、請求の受付の翌月末に行われます。
令和8年度の計画書は、1年分の加算の見込みを、前年度にすでに受け取った額の半分以下で書いていることになります。令和8年度の計画書の報酬総額(月100万円)と実際の給付との食い違いは、処遇改善加算の検証 ― 令和8年度の計画書 で詳しく取り上げています。
確認できたこと・できていないこと
確認できたこと — 計画書の見込額、実績報告書の加算額、月ごとの給付の実績は、いずれも大阪市が保有する文書・データに記載された数字です。実績報告書の加算額は、市の給付データと119円差で一致しています。
確認できていないこと
- 見込みを小さく書いた理由。計画書の様式は、前年1〜12月の報酬総額を12で割るなどの方法で見込むよう求めています。開設の直後で前年の実績が短かったことは、見込みがずれる理由になりえます。
当サイトの見方 — ただし、ずれは数%ではなく1桁で、最初の1か月で年間の見込みの約9割に達しています。翌年度の計画書でも、前年度に受け取った額を下回る見込みが書かれています。「開設の直後だったため」だけでは説明しにくいと考えます。次に問われるのは、受け取った額以上を、実際に職員の賃金の引き上げに充てたかです(→ 第2回)。
出典・根拠
- 令和7年度の計画書:令和7年度 福祉・介護職員等処遇改善計画書(しょーとすていYorimado。大阪市の受付印 令和7年4月15日)。大阪市の情報公開制度で入手。
- 令和7年度の実績報告書:令和7年度 福祉・介護職員等処遇改善加算 実績報告書(合同会社Yorimado。令和8年7月28日作成・同30日提出)。大阪市の情報公開制度で部分公開。
- 令和8年度の計画書:令和8年度 福祉・介護職員等処遇改善計画書(合同会社Yorimado。令和8年4月11日誓約)。大阪市の情報公開制度で入手。
- 月ごとの給付の実績:大阪市が提供した令和7年度の給付の実績データ(しょーとすていYorimado の短期処遇改善加算Ⅰ・269行)。金額は単位数 × 10.96円で算出。
- 本ページは公文書の記載を整理したものであり、不正があったと断定するものではありません。
連載の一覧 ― 令和7年度の実績報告書
- 第1回令和7年度 計画と実績このページ年度の初めに届け出た加算の見込みが、実際の約14分の1でした。
- 第2回賃金改善の報告と給与「毎月の賃金で上乗せした」という報告と、記録に残る給与の動きが合いません。
- 第3回求人の賃金と処遇改善求人に書かれた賃金では、報告された上乗せを配りきれません。
- 第4回職員体制と上乗せの額報告された賃金の上乗せが、職員の年収の合計を上回っています。
- 第5回年収440万円の報告と関連法人「年収440万円以上の職員が2人いる」という報告が、届出の勤務と求人の賃金からは出てきません。
よくある質問
処遇改善加算とは何ですか?
計画書の見込みが小さいと、受け取る額も小さくなるのですか?
13.8倍というのは、どの数字どうしの比ですか?
令和8年度の計画書の「約4.4〜5.2倍」とは別の話ですか?
更新履歴
- 2026-10-12 — ページの冒頭に「何が問題か」の節と図を、末尾に連載の一覧を追加し、構成を整理しました。
- 2026-10-06 — 本ページを公開しました(→ NEWS)。